ボクは人が多い場所が嫌いだ。
熱気で気持ち悪くなる。
夜でいくらか涼しくなるとはいえ、何を好き好んで猛暑な夏に出歩かなきゃならない?


そう思うのに…そう思うんだけど、軽く「えぇ? いいじゃん、行こうぜ」と云われて嫌な顔をしたら「年寄りかよ、お前」と呟かれて、勢いで頷いてしまった。



本当にドコからこんなに人が集まるんだ。
たかが花火が上がるぐらいで。
そう呟いたら「オレ達もその一人だぜ?」と笑われた。

誰のせいで、こんな所にいると思っているんだ。


人ごみが苦手なのに、進藤はその人をかき分けてどんどん進んでいく。
花火の音を聞きながら、進藤の姿を追う。

こうやって背中を追いかけるのは嫌いだ。


進藤は前だけを見ている。
その先にボクはいるんだろうか…とても不安にさせられる。
他の誰かを見ているんじゃないだろうかと。


そんな事を考えていたら、その背中を見失ってしまった。
見えるのは他人の背中だけ。
花火の音と、浮かび上がる見上げる人々の横顔。


こんなに人が居るのに…ボクが探す人は居ない。




ふと…どこへ行けばいいのか判らず、立ち止まってしまった。



「塔矢!」

いきなり腕を引かれて、探していた顔を見つけた。

「莫迦、迷子になんなよ」

「誰が迷子だ。逸れたのはキミの方だろう」

「…………」

「何だ」

「はいはい、オレが悪いです」

ふざけた言い方でそう云う進藤が、とても頼もしい笑顔で笑いかけながらボクの手を取った。

「進藤っ」

「オレが悪かったから…そんな不安そうな顔、すんなよ」

繋いだ手に力を込めながら、進藤はボクの顔を見ないように前へと進んだ。



こんな風に…進藤はボクの不安を感じ取ってしまう。
こんなボクに気付いて欲しくないのに…気付いてしまう。

ボクは俯いたまま、進藤の手を握り返した。




「ほら、塔矢」

暫くして立ち止まった進藤は、ボクを振り返ると上をさすように顎で示した。


大きな音と共に、眩しい光が視界を奪ったと思うと、視界いっぱいに大きな花火が広がった。
熱気も…手の熱さも感じないぐらいに、それは綺麗な夜空だった。

こんなに近くで…こんなに大きな花火を見たのは初めてで、不覚にもボクは進藤の思惑通り見惚れてしまった。
続けて上がる大輪の花に、魅せられてしまう。



「塔矢…」

すぐ近くで呼ばれて振り返ると、目の前に進藤の顔があった。
軽く触れた唇。

「しっ進藤っ?!」

「大丈夫、誰も見てないって」

そう云いながら、懲りずにまた近付いてきた。

「皆、花火に見惚れてるから見てないって」

そう云って目を細めた笑顔に、夜空に浮かぶ花火と重なって、不覚にも見惚れてしまい抵抗を忘れてしまった。











「塔矢」

「………うるさい」

「花火、良かっただろ? 来年も来ような」

「一人で来い」

「ヤだ、一緒じゃないと楽しくないじゃん」

「…………いい加減に手を離せ」

「ダメ、滅多に繋げないんだから」

「…………いい加減に…その顔をやめろ…」

「え〜〜? いいじゃん、嬉しいんだから」

「ニヤけた顔をするな」

「幸せそうな顔と云ってくれ。外でしたちゅうは、どんな気分だった?」

「進藤っ!!!」

思いっ切り進藤の足を踏んでやった。

残暑お見舞い申し上げます・・・

高田あさぎ & みなみかな
2004.08.29




 

『千一夜』様からいただきました。残暑お見舞いイラストとSSです。
千一夜様からは沢山のヒカアキ萌え♪をいただきました。
ほぼ毎日のようにおじゃましていたのですが、この度9月末でサイトを閉鎖されること
になりました。寂しい限りです。
けれどヒカアキラブにかわりがあるわけではないので(ですよね?)これからも今まで
同様お付き合いのほどよろしくお願い致します。
お二人ともお疲れ様でした。
そしてこんな素敵な萌えヒカアキをありがとうございました。

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