『ボク達のvelocity』


「塔矢、手」


進藤はボクにパジャマを着せて、ベットへ座るとそう云って手を差し出した。

何を云われているのか…よく判らずに相手の顔を凝視してしまう。



どう反応しようかと躊躇していたら、進藤は少し不貞腐れたような顔をした。


そんな子供っぽい仕種が好きだと…急に思った。

自分がボクより子供っぽいのと思って気にしてるのか、進藤は妙にそういった仕種を隠そうとする。
そんな様子もまた、子供っぽいということに気付いてないようで…そんな進藤が好きで黙っている。


「いいから、手!」


再度、そう云うともうボクの返事を待たずに強引に手を取ると、そのまま引っ張られベットへと沈んだ。
手を繋いだまま倒れこんだベットは、肌触りのいいシーツに変わってて…先ほどの名残など何処にも
なくなっていた。


ボクがバスルームにいる間に、進藤がシーツを替えたのだ。


いつの間にこういった気を遣うようになったんだろう。
あれだけ好き勝手しておいて…ボクは気持ちを静めるのが精一杯だったというのに。

そんな余裕を見せる進藤が気に喰わなくて…悔しくて…倒れこんだまま近くにある顔を睨んでみる。
その視線に気付いたのか、進藤はとても…とても嬉しそうな笑顔を見せた。


また、それが悔しくて…全てを見透かされている感じがして悔しい。


進藤はボクの手に指を絡めると、意識を自分へと向ける為に力を込めた。


「今日はコレで寝よ」


そう云うと、近いけど触れ合わない距離で…唯一触れ合っている手を引き寄せキスをした。



あぁ、これはボク達の距離だ。



好きだと…相手の何もかもが欲しくて与え合ったのは、まだ二度目。

それは、とても幸せで…戸惑いの行為で、ボクは全てを受け止めきれない。
初めての時、余韻に浸るようにボクを抱えるように抱き締めて眠る進藤。
誰かの鼓動を直に感じて眠る事に慣れないボクは、とても落ち着いて眠れなかった。

進藤は気付いていたのだ。

そして、この距離から始めようと云っているのだ。


この距離から…ボク達の速度で。



ボクは、そっとその手を握り返した。







                                           2004.05.07  高田あさぎ様





このお話はヒカアキサイト『embrace』の高田 あさぎ様から当サイトの開設お祝いに、と頂きました。
メールで頂いて拝見させていただいた時、ちょっと涙が出てきてしまいまして・・・・・。
ふたりの目線の高さや雰囲気。進藤の優しさ。そしてその進藤の優しさを充分理解し、静かに受け止めているアキラさん。
本当にしみじみと私の心の奥底に染み込んできました。
これから始まっていくふたりの未来がきっといいものであろうことは、このお話から充分想像されますね。
私のサイト開設にあたって、こんな素敵なお話を頂けて幸せです。
『やっぱりヒカアキっていい』
あさぎ様、ありがとうございました。

             

HOMEへ