| amae |
「邪魔だ。うっとうしい。離れろ」 夕飯の支度中に後ろから張り付いてきた大型犬に言い放つ。 「えーー、ちょっとぐらいいいだろー?」 「今、夕飯を作っているんだぞ。そんなことされたままじゃ危ないんだ」 「ちょとだけからさ。俺、今寂しい病なんだよ〜。構ってくれないと寂しくて死んじまう」 邪険にしてだめならと違う方向から離れるように言ってみたがそれも結局は不発に終わった。 どうやら時々起こるいつものやつみたいだ。 出来ればちょっとぐらい相手をしてやりたいところだが今は料理中だ。 火も使っているのにそれを放って相手をするわけにはいかない。 かわいそうだけどしばらくの間我慢してもらおう。 実際危ないし、いつもわがままを聞いているわけにはいかないしな。 言っても離れないそれを睨み付けてやろうかと振り返ったところに甘えるような上目使いで見られて一瞬気勢をそがれた。 この大型犬はそういうタイミングをみるのがうまいのか、怒ろうとするたびにこうしてうまく避けられてしまう。お陰で一緒に居る時間が増えてからはまともに怒れたことがほとんどない。 どうしたらいいんだ……。 いわゆる「振り上げた拳を降ろす場所」に困った僕は首だけを後ろに向けたまま動けなくなってしまった。 怒るタイミングを逃してしまったせいで変な顔をしていたんだろうか、くすりと笑われる。 それで自分がほうけていたこと、それを見られていたことに気が付いてうろたえた。 見られたくないところをこんな至近距離で見られてどうしようと、慌てる頭ではなにも考えられなくてさらにうろたえる。 「どうしよう」 の単語だけが頭の中を駆け巡り、そこここにぶつかって混乱だけが大きくなっていく。 後ろで煮物の吹きこぼれる音がしなかったらいつまでもそのままだったかも知れない。 その音で今は料理中だった事を思い出した。 当面、コレのことは放って置こう。 そう決めてしまえば切り替えるのは簡単だった。 直前まで何かをしていても盤に向かえばそれだけに集中する、そうして積み上げてきた経験が今は日常でも役に立つようになっていた。 溜め息を一つ吐いて正面に向き直る。 途中だった料理が焦げたり味が悪くなったりしていないのを確認してほっと息を吐いた。 さすがに張り付きにくいのか、料理を盛り付ける段になると後ろの大型犬も離れて食器を運ぶのを手伝いだした。 自分より大きな体が楽しそうに配膳するのを見て、まるで言うことを聞いたあとに褒めてもらうのを楽しみにしている犬みたいに見えた。 確かにこうしてみていると大型犬そのものなんだけど、そう思ったら知らず笑みがこぼれた。 出来あがった料理をテーブルに並べこちらを振り返った大型犬が不思議そうな顔をする。 それで一段と笑みが深くなった。 不思議そうに僕を見ていた犬がひょいと寄ってきてまた張り付いてくる。 ああ、これからご飯なのにと思ったら 「おまえかわいいv」 満面の笑みで言われ、そのままぎゅっっと抱き締められてしまった。 まさかこのまま……と困惑しているうちに頬をすっと撫でられ、そこに軽く触れるだけのキスをして離れていく。 「本格的なのは飯の後なv」 後ってなんだ!と言いたかったがそんなことをいっているうちにせっかく作ったご飯が冷めてしまうからそのまま聞き流す。 二人で他愛のない話をしながらの夕食を終え、いざそのときになるといたずらっこのようなそのくせ男の色を潜ませた瞳で見られて僕は早々に白旗をあげることになったのだった。 1月18日 じゃっきー様より |
| この素敵なお話はヒカアキサイト『月陰』のじゃっきー様からお誕生お祝いに・・・と頂きました。 夕餉の支度中のアキラさんにまとわりつく「大型犬・進藤」! イイなあっ!!自分もこんな進藤にまとわりつかれてぇ! アキラさん、贅沢ですっ!ああ〜でも進藤に向かって『邪魔だ。うっとおしい。離れろ』だなんて 言えるのはアキラさんだけですよねー。(言ってみてぇ!) 何気ない二人の生活のワンシーンなんですがふたりの順調な夫婦生活(笑)が伺えるこのお話に 「うん、うん・・・あんたたち、末永く仲良く暮らすのよ」 と心からエールを送らずにはいられませんでした。 日々お忙しい中、私の誕生日にと時間をさいてお話を書いてくださり本当にありがとうございました。 いつもオン・オフ共にお世話になっておりますがこれからもどうかよろしくお願い致します。 |