和谷君のつぶやき



今日は暑気払いと称して若手棋士達が集まっての飲み会。
男女取り合わせて結構イイ人数になった。
前は滅多にこの手の集まりには参加しなかった塔矢(最年少棋聖さま)までも今日は参加している。
そして、今オレのナナメ前の席でその塔矢に向かって手をヒラヒラ振ってるオトコ。
進藤ヒカル最年少本因坊。
初めて買ったサングラスが嬉しいらしく、掛けて見せては
「似あう?♪」
とか周りに聞いてる辺りはまだまだ子供だなと思う。
・・・・思うが!

昔はオレよりも全然背は低かったはずなのに
今ではなによ?
コイツはそれからすくすくと成長して、今では立って話する時は悔しいけど軽く見上げしまうくらいになりやがった。

背だけじゃねえ。
顔だって!

初めて会った頃なんて、ぽちゃぽちゃ丸くっておだんごみたいな顔だったんだぞ?
それが今じゃどうよ?
イケメン棋士とか騒がれて雑誌には載るわ、棋院にファンの女の子まで押し掛けるようになるわで
もう羨ま・・・・迷惑なこと限りねえ!


だからさ。
いくらライバルで仲がいいからってオトコがオトコに向かって手なんか振ってんじゃねえよ!

あ〜あ・・・・。
あれは絶対カンチガイしたぞ?
進藤が手を振った先の少し離れた席に座ってる塔矢の隣のメグちゃんと、その向こう側に座ってる
りかちゃん。
メグちゃんは「進藤さ〜ん」とか言って手、振り返してるし、その向こうのりかちゃんが
ポっと頬を赤らめたのをオレは見逃さなかった。

ちくしょう。
いっつもこうだぜ。
オレがいいなって思う娘は皆、進藤になびいてく。
そんな美味しい状況下でありながら進藤の奴。
絶対そっちにはなびかないんだよな。
「オレには生まれた時に決められた許嫁が居てぇ・・・・」
とかワケわかんないこと言って、言い寄ってきた娘を煙に巻いたりしてるのを何度か聞いたことがあるし。

こいつ見掛けはチャラ男だけど、実は身持ちが固くて一途だってのも知ってる。
前に「試しに付き合ってみればいいじゃん」
って言ってみたことがある。そしたら

『オレ試しにとかってダメ。相手に対して失礼じゃん。付き合うとかってさ好きだからするもんだと思うし。
 それにオレ、好きな奴・・・いるし。まだ片思いだけど』

最後の辺りは口の中でもごもご言ってたけどオレの耳にはちゃんと届いた。

「え?好きな奴って誰なんだよ?教えろよ〜?」

なんていつもの調子だったら聞いたりしたんだろうけど、あん時の進藤の思いつめた様子に、
オレは問い詰めるだなんてこと出来なかった。

あの進藤がそこまでに想う相手。
それが塔矢だというのはじきにわかった。
あいつ、思ってることが顔に出やすいからなー。
それとなく注意して見てたら何かわかってしまった・・・・。
同じ部屋に塔矢が居る居ないでは、進藤のはしゃぎ方が微妙に違う。
そう。あいつの視線の先にはいつも塔矢がいる。
それに塔矢。
昔っから進藤の事をライバル視して追っかけてたのは周知の事だけど
塔矢の進藤へ向ける思いと進藤の塔矢に対する想いが同じだとは思ってもいなかったので
この二人がそういった意味で納まるところに納まってしまってオレは本当に驚いた。

この間棋院の空いてる対局室から進藤の声が聞こえたみたいだったから、ちょこっと中を覗いてみた。・・・・ら。
塔矢と進藤が抱き合ってんのが見えて腰抜かしそうになった。
「あぶねー!危うく声、掛けるところだったじゃんかよ。職場でいちゃついてんじゃねーぞ!」
と心の中で毒づいてから、自分の中に嫌悪感が沸いて来ないのに驚いた。

どう見たってあいつらの関係はオカシイ。
普通じゃない・・・・って頭ではわかってるんだけど、心ではもうあの二人のこと許しちゃってるってか
認めちゃってるってか・・・・。
まあ、大体オレが他人様の恋路を許すだの許さないだのと口を挟める筋合いじゃねんだけどな。

と言うワケで、進藤はオレが二人の事に気が付いてるのをまだ知らない。


あ〜あ・・・・
今度はウインクまでしてやがる。
切ない片思いが実って今は一番はしゃぎたい時だろうなってのは分かる。
でもな、もうその辺で止めとけッて進藤。
塔矢の奴、澄ました顔してっけど耳が真っ赤だぞ?
まあ、照れて赤いのか怒りで赤くなってんのかは定かじゃないけどな。
どちらにしたって、このやんちゃ坊主進藤の手綱は塔矢がしっかりと引き締めてかないと
後々が大変な事になるぞー。


・・・・・・・・・・なんて余計なお世話か。
塔矢の事だ。
浮かれタイプの進藤とは違って、そこら辺はキッチリとするはずだよな。


そんなどうでもいい事でやきもきとした一次会もお開きとなり、
さあ次はどこにしよう?!と皆が外でざわついてるのを尻目に

「んじゃ、おれらここで帰っから―。今日はお疲れ〜」

と手をひらひらとさせさっさと背を向ける進藤と、皆に向かって丁寧にお辞儀をして
進藤と共に去っていく塔矢。

―え〜〜?!進藤さんと塔矢さん、帰っちゃうの〜〜?!―

なんて一瞬、声が上がったものの、
「カラオケの部屋を押さえたぞ」
の声にみんなの意識はそちらへと動いて行く。
ぞろぞろと集団が移動を始めた時、オレは進藤たちが歩いて行った方向を何気に振り返った。
そして我が目を疑った。






あいつら手ぇ繋いでやがる!!





をい!塔矢っ!
浮かれ進藤の手綱をお前が締めなくて誰が締めるんだよっ?!
オマエまで進藤色に染まっててどうする!
ここは街中だぞ?!自重しろ!自重〜〜〜っ!




・・・・ってな。
オレ、馬に蹴られて死にたくはないので放っとこ。

さ!カラオケでメグちゃんとりかちゃんにいいとこでも見せるか。
オトコは進藤だけじゃないってとこを見せつけてやんないとなーーー・・・・・・・・。


・・・・・・・って何気に進藤に張りあってる自分が悲しい。




これから先、色々と大変な事はあると思う。うん
でもまあ・・・・なんだな。
頑張れよ。お前ら。




【あとがき】

初めは塔矢目線で「進藤賛美」を語らせてました・・・・・。
そしたらもう、止まらない止まらない!!とてもじゃないけど1Pなんかじゃ足んねえ!(爆笑)
・・・・・っつか誰か止めろよ!

・・・・・・・・・ってな事態になりまして(苦笑)
ここでピンチヒッター「困った時の(かわいそうな)和谷君」の登場です。
ごめんね和谷っち。
そのうちきっといい彼女が見つかるってばよ(適当なその場しのぎの発言)

主催者様。いつもありがとうございます。
閉会ぎりぎりに掛け込んでる奴です。
ヒカアキらぶ!!(っつか進藤ラブ?・・・・えへ)
と叫んであとがきを終わりにしたいと思います。
貴重なお時間をありがとうございました。