【 welfare 】
暖かい何かに包まれている。
そっと何かに引っ張られたような気がして、ゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。
隣に…目の前にある進藤の顔が視界いっぱいに広がって一瞬、思考が止まった。
なんで…進藤がここに?
何故かボクの腕をがっしりと抱き込んですやすやと眠っている。
穏やかな寝顔に、胸が暖かくなっていく。
ふと、温かい気持ちと共に、昨夜の事が思い出されて一人、頬が熱くなるのが判った。
もう何度も一緒に夜を過ごしているのに、どうしても慣れない感覚。
どうしても素直になれなくて…意地を張ってしまう自分。
その分、一気に気持が高まると自分でも止まらなくなってしまって、何もかもを曝け出して溺れてしまう。
全部が欲しくて…どうしようもなくなる。
そんな感覚を知ったのも初めてだった。
どう考えても、相手に溺れている。
昨日の昼間の出来事を思い出して、複雑な心境が蘇った。
自分だけを見て欲しい。
相手にも…もっと溺れてほしい。
どんどん我儘になっていくのが怖い。
相手の温もりをもっと感じたくて、空いている方の腕を進藤の背中に回して抱きしめてみる。
ふっと進藤の身体から力が抜けたのが判った。
こんな時でも緊張しているのだろうか。
いつもそうだ。
そっと大事そうに触れてくる進藤。
顔を緊張で強張らせて。
愛しさで自然と頬が緩む。
背中に回していた手を髪へと移動させ、優しく梳く。
こうなるまで、遠い存在。
追い掛けても追い掛けても不確かで…。
捕まえても消えてしまいそうで…。
いつも安心なんて出来ない存在。
出会ってしまった唯一の存在。
髪を梳くついでのように、進藤の頬に触れた。
それだけじゃ止まらなくて、そっと目の前の唇に触れる。
たったそれだけの事なのに、指先が熱くなってしまって…それを誤魔化すように
また、指を戻すように髪に触れた。
「…………お前…反則」
「…起きていたのか?」
髪を梳いていた手を掴まれて引き寄せられるように進藤は抱きしめてきた。
とっさに身じろぐ。
「ダメ、逃げないで」
しっかりと抱き込まれては逃げられない。
進藤は、素直になれないボクの逃げ道を塞いでしまう。
「もっと…オレを独り占めして?」
「…………莫迦」
気付いていたのだ。
昨日、誰かと携帯で話していた進藤を見て、少しだけ感じた何か。
楽しそうに話しているのを見て感じた疎外感。
そこには、ボクの知らない進藤がいる気がした。
身勝手な独占欲。
「…そんな寂しそうな顔、しないで」
囁く進藤に抱きしめられて、感じた体温にほっとした様子で息をつく。
言葉は出てこず、おずおずと肩口に顔を埋めた。
そして、小さく言葉を発した。
「………今日は…ちょっと肌寒いな」
素直になれないボクの精一杯の強がり。
ぎゅっと抱きしめられて意識がふわりと浮かんだ気がした。
「寒くなるといいよな。こうする口実が出来て」
いたずらっ子のような、嬉しそうな声がした。
そんな様子が可笑しくて小さく笑ってしまう。
「いつも口実がなくてもするじゃないか」
「んー、したいから仕方ない」
くすくすと笑いながら、小さくキスを落とされる。
額に。こめかみに。頬に。
唇に。
吐息が心地いい。
「朝までまだ時間あるから」
「うん」
吐息が「おやすみ」と交わすと、瞼が重たくなる感覚がよみがえる。
自分を包み込む温もり。
この温もりを、ボクも相手に与えられているのだろうか。
この至福な時間を。
そうして、また、暖かい腕の中で眠りについた。
【 welfare 】おまけ(進藤サイドへ)
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2009.1.17 asagi takada