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『あれか?この前お見合いしたって女は?!アイツ結構楽しそうに話してんじゃん』
薄暗いホテルのラウンジの窓側に腰掛けてるカップル…いかにもお嬢様といった感じの女性と相手は塔矢アキラだった…。
いつもは見せない優しそうな顔をして、相手の一言一言にうなずいている。
ここは都心でもおしゃれな部類に入るホテルで、たいがいの女の子ならばまずここのスカイラウンジに連れてくれば眼下に広がる綺麗な夜景とピアノの生演奏にうっとりすることまちがいなしだ。
『ねえ!ヒカルってばぁ!どこ見てんのよ?!知ってる人?』
『ん?ああ・・・ごめん!似てるけど違う奴だった』
ああ‥そうだ、オレも今は彼女とデート中だったんだっけ?
下に部屋もとってあるし今日はお泊りの予定だ。
今は夜の十一時半。塔矢だってこれから彼女を帰す訳じゃあないだろう。
きっと下に部屋を取ってるに違いない
『ねえ・・・なんか私お酒が回ってきちゃったみたい。ヒカルはまだ飲み足りない?』
『いや、もういいよ。それにこれ以上飲んだら後に差し支えちゃうしな!』
『もうっ、ヒカルったら』
何気に塔矢の視界に入らないように席を立つ。
『シャワー、先私が使うわね』
彼女がシャワーを使ってる間オレはタバコをくわえ上着を脱ぎながらぼーっと塔矢のことを考えてた。
『多分ありゃ、前塔矢の碁会所の人たちが噂してた塔矢後援会の会員の孫とかいう人だな。オレたちもそこそこイイ歳になったし,アイツは塔矢アキラだからなあ・・・・ファンも多いし引退した親父さんのこともあるから余計回りもうるさいよなぁ。』
今頃アイツもこのホテルのどこかの部屋であの女と・・・・・
『うっ・・・想像つかねえ!ってかどんな顔してオンナを抱くんだか・・・?』
イロイロと考え始めたらとめどもなくなり・・そうこうしてるうちに彼女がシャワールームから出てきた。
『ん・・・・イイ匂い♪』
バスタオルを巻いただけの彼女を抱き寄せ、ちゅっ♪っと彼女の首筋に軽いキスを落とす。
『こらっ!はやくシャワーあびてらっしゃいよっ!』
『へ〜い♪』
彼女・・・とは付き合い始めてかれこれ3ヶ月・・かな?
まあ、彼女はいわゆるオレの追っかけみたいなもんで始めはテキトーにあしらってたんだけどファンの娘たちとオレら若手の棋士たちのコンパの後酒飲み過ぎて・・・・気がついたら朝彼女といたしちゃった後だった・・・・。
それからなんかずるずるとこうやって付き合ってたりする。
段位が上がってオレや塔矢は何かとテレビや雑誌に取り上げられる事が多くなった。
それにつれ「今まで碁なんか知りません」みたいな女の子たちからも騒がれるようになってきて、いわゆる「入れ食い?」状態の夢のような日々だ!
お堅い塔矢と違って見た目や言動が軽いオレには容易にキャーキャーと女の子たちが群がるようになった。
もちろん塔矢にだって熱烈なファンは沢山いる。
バレンタインデーだって棋院にはどっさりとオレたち宛に山盛りのチョコが届いたもんだ。
・・・が!紙袋一つ分塔矢に負けた!
『はーーー!』
がーーっとシャワーを頭から浴びて頭をガシガシと洗うと酔いの回り始めてた頭も少しスッキリしてきた。
『あ・・・・・ん////・・・今日のヒカル・・なんかすごい・・・』
『そう?いつも通りなんデスけど?そんなにイイ?んじゃもう少し頑張りマス』
付き合って3ヶ月も経てば、そっちの進め方も慣れてきてとにかく彼女のイイところを容赦なく攻め立ててやった。
いつも思う・・・
『セックスなんてこんなもんだよな』って。
終わった後・・・・いわゆる満ち足りた気分ってなのにオレはいっぺんだってなったことはない。
カラダだけがイッても心がイかないってかなんつーか。
『オレってもしかして不感症??』
オレの横で彼女は既に満ち足りた顔でスースーと寝息を立てている。
なんか今日は塔矢のデートシーンを目撃して、精神的に興奮してんだかいつもならスンナリと眠りに入れるのが今はムリそう。
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『あっ・・今日はオマエ危険日だったよな』
『イイよ・・・別に私・・ヒカルの子だったら欲しいし・・・・』
『えっ?!』
あの時一瞬マジで引いてしまったオレの表情を逃さず、でもさり気に気付かないフリをしたあかり・・・。
『ふふっ・・・うそだよーん。まだ私だって花の女子大生なんだからもっと遊びたいモン。子供なんて・・ムリに決まってるじゃん』
2年近く付き合ったあかりから別れを告げられたのはそれから程なくしてのことだった。
『あれが決定打だったんだろうな。あの時あかりは同じサークルの先輩って奴から猛烈なプッシュされてたらしいし』
幼馴染で気心も知れててお互い碁も打つし、あかりの高校へ指導碁に行ったりしてるうちに、オレとあかりは自然と付き合うようになった
だけど何ていうか・・・温度差?って奴??
オレの思いとあかりの想いには格段の差があったってコトを別れを告げられた時知らされた。
『ヒカルは私といてもなんか別の事考えてたでしょ?!心ここにあらずって感じで!そりゃ四六時中私の事を考えててくれなんて言わないけど、せめて・・・せめて私と一緒にいる時位は私のことだけ見てて欲しかった・・・・。』
自分はそんな気は毛頭なかったし自覚が無かったから、正直言って驚いた。
オレはそんなにオマエに対して精一杯じゃなかったんだってことに改めて思い知らされて。
『あかり・・・こんな奴振って正解だったよ』
あれから、寄って来る女の子たちを次から次へといただいちゃったり派手に別れ話を棋院の近くでやられちゃったりしたもんだから、流石に棋院上層部からお小言をいただいた。
しばらくはおとなしくしてたんだけど・・・・。
まあ若いってコトで。
『朝、塔矢の奴と鉢合わせなんかしたらヤダな。どっか他所行ってモーニングでもとるか』
結局ホテルの地下駐車場からクルマを出して近くの店で彼女とふたり、ちょっと遅めの朝食をとった。
『家まで送るよ』
路駐の車にキーをいれてたらすぐ脇を塔矢が運転するクルマがスピードを上げて走っていった。
助手席にあのお嬢様を乗せて・・・・・。
『なんかヒカル、不機嫌』
『え?んなことねえよ!』
『ううん。ヒカルのここんとこシワが寄ってるモン』
オレの眉間のあたりに触ろうとした彼女の手を瞬間払いのける仕草をしてしまって思わずハッとなったけど、もう遅かった!
『ヒカルってベッドの中以外ではあんまり私に触ろうとしないよね・・・・それって本気じゃないって事なのかな?私はただのセックスフレンド?』
『・・・・・・』
『ホラやっぱり即答できないじゃない?』
『いや・・・今運転中だし・・・』
『デートだっていっつも私の方から連絡取らないとヒカル、逢ってくれないじゃない?!』
『そ、それはオマエとなかなか時間帯が合わないから・・・・・』
『結婚だって、今は全然考えてないって言ったわよね?』
『うん・・・・そこまではなーーー』
と、ついうっかり本音を吐いてしまった。
彼女の顔色がさっと変わった。
『い、いや!今すぐどうこうって事が考えられないってだけで・・』
今更どう取り繕っても「後の祭り」だった。
『さよなら!』
バタン!と勢いよく車のドアを閉めて彼女はオレの元を去った・・・・・。
なんかもう、追いかける気力も無くって・・・・。
『ふぅぅーーーーー、3ヶ月かぁ・・・・オレにしちゃよく持った方か?』
『あーーーまた振られたのかぁ?オマエ!』
とかなんとか嬉しそうにオレのこと指差しながら叫ぶ和谷の顔が目に浮かぶ様だよ。全く・・。
そうひとり呟くと、くすぶってたタバコを思いっきり灰皿に押し付けエンジンをふかした・・・・・。
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