別れ・10(塔矢side)


「進藤を好きになって良かった・・・・・・」

「あ?」

「こんな結果になってしまったけど・・・・でも彼と付き合ったことは決して後悔なんかしてないし、色んなものを貰ったような気がするよ・・・和谷君、ありがとう」

「んーーなんかよくわからないけど、少しは落ち着けた?」

「うん、自分ではかなり冷静に受け止めてるつもりだったんだけど・・・ちっともそうじゃなかったみたいだ。和谷君と話せたお蔭でそれが良くわかったよ」

「うん・・・・悩みの真っ只中に居る時って自分しか見えてないからな。そんな時は誰かに話して、自分を一歩引いた所から見てみるのもイイのかも知れないな」

「あのまま行ったら、ぼくは自分が嫌いになる所だった。」

「そっか、オレさお前たち二人の様子を傍で見ててすんげー辛かったんだよ」


とそこまで言うと和谷くんはまたビールをグイっと飲み干す。


「あの・・・さ。あの日ただの飲み会だってウソついて進藤を誘ったのってオレだし。だから凄く責任感じてるんだ!マジで。あいつコンパだってわかったらヤダって言ったんだよ、それをオレが無理に誘ったからあんなことに・・・・・塔矢、ゴメン!」

「和谷君、それは言わないで。もうみんな大人なんだし最終的には何事も個人の責任だとボクは思うから」

「ありがとな、塔矢にそう言ってもらえて、オレ少し救われた気がする。」


そうか、和谷くんも苦しんでいたんだ。
辛いのはボクだけじゃなかった。


「じゃあさ、今日はどんどん食ってどんどん飲んで話そうぜ。言いたくて言えなかった事、今日はみんな吐き出しちまえ。あ、ただしノロケ話だきゃあカンベンな!それはもうさんざん進藤から聞かされたから」


「ぷっ・・・・・一体進藤は何を話したんだ?」

「あーーーたとえばだなー、塔矢の入れるコーヒーはすんげい美味い!とかさ。オレだって同じ豆使って入れるんだけどどうしてだか、塔矢が入れてくれる方が断然美味いんだよ〜〜〜♪それってやっぱ愛がこもってるから?・・・とかさ!ああーんな話やこんな話を大人しく聞かされてたんだと思い出すだけでもムカムカくる!」

「あはは・・・・全く仕方がないな、進藤は」

「笑い事じゃないぜー☆全く。だからもうオレとしてはノロケ話はもう充分!って訳」


その晩は久しぶりに笑った。
やはりご飯はそれほど食べられなかったけど、誰かと食事をしてこんなに楽しいと感じたのは久しぶりのことだった。
和谷君の心遣いが嬉しかった。
そして進藤にも・・・・・・・。


それから帰宅して、お風呂にゆっくり入って
そんな彼に恥じないように生きていこう、とその晩ボクは強く思った。


                                                   2005年10月18日

 

小説に戻る