別れ・13
| 年が明けて・・・・・ 棋聖戦7番勝負の第1局が1月16日真冬の福岡にて開催された。 一時棋聖戦の第一戦は海外で行われる事が多々あったが、昨今のテロ事情でここ1、2年ばかりは国内で行われている。 防衛者は緒方棋聖、挑戦者は塔矢アキラ八段。 勝てばアキラは史上最年少棋聖となる。 《全互先》 《先番6目半コミ出し》 《持時間、各8時間》 今日、明日と二日間に渡って戦いが繰り広げられることとなる。 惜しくも予選で敗退した進藤も、ネットで次々と配信される速報に目を凝らした。 注目の第一戦は、翌17日緒方棋聖が流石にジックリと安定した打ちまわしを見せ僅差で塔矢アキラに勝ちを収めた。 「今まで塔矢アキラ君とは同じ門下同志、兄と弟のような関係だったけれど明日からはそのようなしがらみを一切捨てて、私はなりふり構わずタイトル防衛にかける所存です。 だから塔矢君も思う存分立ち向かって来て欲しい」 前夜祭での緒方棋聖のこの言葉にはアキラも感極まった様子で、 頬を紅潮させながら一言・・・ 「頑張ります」 と発した。 そして、春の兆しを色濃く見せ始めた3月、静岡でお互い三勝三敗となだれ込んだ最終決戦、第七戦が行われた。 最終戦とあって、会場に集まった観客やマスコミの数は相当なものだった。 そしてこの模様はテレビでも中継される。 もちろん、ネットでも同時に配信された。 アクセス数がかなりの数に上がったことは、棋聖戦が終了してから発表され話題を呼ぶこととなる。 そのような中で最後の戦いは始まった。 実力が伯仲している今、あとはお互い気合と気力の問題だった。 どちらも体調はベスト。 精神力に関しても、数々の棋戦を乗り越えてきた緒方棋聖に対して、 塔矢八段もひけを取っていなかった。 途中、緒方にギロリと睨まれても動じることなくサラリとそれをかわす。 一時、緒方に押され気味で 「塔矢君も、もはやこれまでか?!」 とみなが思い始めたその時。 誰も思いもつかないような所に、塔矢が決めの一手をほうりこみ、結局それを最後まで挽回出来なかった緒方の負けが決まった。 その場に居た・・いや会場やテレビ画面を見ている者たち誰一人として思いつかない手であった。 ただひとり自宅のテレビで観戦していた進藤を除いて・・・・ 塔矢アキラ、21歳。 史上最年少棋聖の誕生だった。 2005年10月21日 |