別れ・23(進藤side)
(一部裏的表現があります)


「ちょっとした騒ぎになっちまったな。」

「どこがちょっとだ!どこが!!」

「いや本当はさ、あん時オレすっげぇお前にキスしたかったぁーうん!ちゃんと唇にね。危なかったなあ・・・・危うく本当にしちゃうとこだったよ。でもオレの理性を総動員して留まったけどね♪あ〜でもやっぱしとけば良かった?そしたらお前に悪い虫なんかこれからつかな・・・痛ってーー。アキラぁ〜本因坊様に蹴りなんか入れんなよぅ。」

「理性なんか残ってたのか?それは初耳だな、進藤本因坊様。」


塔矢が顔を紅くして怒ってる。
こんな怒ってる顔もオレ好きだなあ・・・とソファーに腰掛け頬杖つきながら、アイツの顔を眺めてしみじみしてたら「聞いているのか?進藤本因坊」と今度は頭をぺしっとはたかれた。


「あれ、やっぱマズかった?」

「あっ当たり前だろうっ?!みんなが見ている前でっ。」



塔矢棋聖は相当なご立腹らしい。
イイじゃん、たかが髪にキスした位で。


ここはオレのマンション。
あの会場内での「熱〜い抱擁」の後、会場はえらい騒ぎになった。
と言うと大袈裟かも知れないけど、最初はオレのジョークだと思っていた人も多かったみたいだったところに

「オレたちこういう関係ですから、ヨロシク」

とアキラの髪に唇を寄せながら肩を抱き寄せ、しれっとしてオレが答えたもんだから、
「マジなのかよ?!マジなんだなっ?!」
ってな悲壮感溢れる空気になっちゃって。


「これは何かの冗談なんでしょう?塔矢棋聖?」


という泣きそうな問い掛けにアキラも敢えて否定はしないで艶然と微笑んでいるし!
今更ながらに
「さすがコイツは度胸が据わってる!ダテに棋聖張ってる訳じゃねぇなっ!」
と、オレは痛く感心したもんだったけど、ただ単にアキラの意識は遠くへ旅立っていただけだったらしい。

和谷がちょっと離れたところでガックリ項垂れているし、緒方さんは「フフン」て顔してこっちを見てるし・・・・・
それからは、棋院の方々のイキな計らいで祝勝会は急遽お開き。
「ええーーー?オレまだ何も食ってないのにぃ」
って思ったけど仕方ないよな。



「明日は棋院もそうだけど、マスコミも凄っげぇかもな。」

「また他人事みたいに言う・・・」


半ば呆れたと言う風な声でつぶやきながらオレの脇に腰掛ける。
待ってましたとばかりにオレはアキラの肩を抱き寄せた。


「うん、ある意味他人事。オレの隣にお前さえ居てくれれば周りの騒ぎなんかはただの雑音だよ。」

「進藤、そうも行かないだろう?」

「う、茶化してゴメン。もう中国にいる塔矢先生たちにも伝わってるよな、きっと。」

「そうだろうね。」

「お前・・・・・本当に良かったの?これで。」

「今更だろう?それに・・・・・それを言うならキミの方だよ、ヒカル」


そう言いながらふわりとオレの方に寄りかかってくる。
アキラがオレのことヒカルって呼んでくれてる。ちょっと照れながら・・・・・


「オレの方なら・・・・・うーん、そうだな、子供がこれからかわいそうなことになってしまうってのが、うん・・・・・気になる。」

「その・・・・奥さんだって複雑だろう?ご両親だってそうだけれど。」

「ああ、元奥さんね。うん・・・・今こんなことオマエに言うのもどうかと思うんだけど・・・・・オレ、結婚してから出来なかったんだ。」


アイツは一瞬何が?って顔したけど、すぐにわかったみたいで顔を赤らめてこちらを見た。


「えーーっと、その勃たなかった・・・っつーかダメでした・・っつーーか・・つまり・・・」

「ヒカル!説明しなくっていい!」


口元を押さえて絶句している。


「結婚までしておきながら彼女には本当に悪かったと思ってる。だけど、こればっかりは。だからこそこれからは自分にウソつかないで行きたいって思ったんだよ。それは彼女に対しても。そこら辺は別れるとき彼女に伝えたんだ。やっぱり塔矢を忘れることが出来ないって。去年お前を抱いた時、あん時はもうそれを伝えた後だったんだ。」

「オレ、本当に色んな人を傷つけてきた・・・・・・・」

「ヒカル・・・・」


ふっとアキラの顔が近づいてきて・・・・・オレたちはキスを交わした。
お互いの存在を確かめたくって何度も何度も角度を変えては顔を離して見詰め合って、また・・・・唇を重ねた。
アキラがオレの事を思いやってくれてるのがわかる。
静かなキスだった。


「オレ泣きそう」


そうアキラの唇の上で囁いた。


「ばか・・・・・・泣くな」


オレを甘やかしてくれる時にアキラが言う「ばか」がオレは凄い好きで。
堪らなくなってオレはアキラをゆっくりとソファーに押し倒した。


「灯り、消して・・・・・ヒカル・・・・」

「んーーーやだ」


あいつの耳元に顔を埋めながらそう言ったら、首筋にかかったオレの息に感じたのかビクっと身体を反らして。
テーブルの上にルームライトのリモコンがあったけど、そんな嬉しい反応を見せてくれるアキラをオレはもっとしっかりと見たかったから何度も消して、と言うアキラに「だめ」「だめ」と言い続けた。
もちろんアイツの弱いところを重点的に攻めながら。
そのうちアイツは諦めたのか、オレの愛撫に積極的に応えてくれて甘い声を上げ始めた。



もうそっからは止まらなかった。



ベッドに移ってからも、何度も何度もお互い求め合った。
十代じゃあるまいしオレたち一体いくつだよ・・・・ってふたり笑って。
でも止まらなかったんだ、オレもアキラも。
求めて与え合って・・・・・・。


もう朝方近いかも・・・・・
アキラは枕に顔を埋め沈み込むように眠ってしまってる。
韓国から帰って、そのまま飛んできてくれたんだもんな。
サラリと顔にかかってるアイツの綺麗な黒髪をかき上げる。
幸せそうな寝顔だなあ・・・・・
ってオレも相当ニヤついてるかもだけど。

今日はゆっくり寝倒そう。
ふたりとも休みだし。
んで、こいつよりちょっと早く起きて朝メシ作って・・・・・冷蔵庫ん中食べるもんあったっけ?
タマゴはあったな。ベーコンも確かあったはずだし、んんーーーパン・・・・は無かったからご飯でも炊くか・・・・
そんで・・・・・・・・・・




眠りに落ちるまでの幸せな時間。
つらつらと考えてたオレの意識もそこで途切れ、オレはアキラの隣で心地よい眠りに引きずり込まれて行った。



2005年12月5日

 

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すっすみません・・・・もう少し続きます。次は塔矢sideでラストです。