別れ−2(アキラside)


それから長い長い沈黙が続いた。
息詰まるような静けさだった。
さっきまでテーブルに顔を伏せていた進藤も今は憔悴し切った様な顔を上げボクを見ている。

「どうしたらいいんだ?」

と言う様な視線をこちらに寄越す彼。
その回答をボクに求めてるの?進藤?
残酷だよ。
迂闊なキミが招いた行動の結果がこれか?
そんなのって・・・そんなのって・・・・・・!!

いつか女性に心を移してボクから離れていってしまうのではないか
彼と付き合っていて常に心の底で密かに恐れていた事。
これは心を移した、という事ではないけれど結果としては同じ事だ。


「別れよう」


自分でも驚くほど冷たい声が出た。

進藤はボクを見つめ絶句している。
瞳を潤ませながら。


「それしかないだろう?進藤。男としてきっちりと責任は取れ!」

「ごめん・・・・・・・・ごめん!塔矢っ!!」

膝の上に拳をぎゅっと握り締め身体を震わせている進藤を見つめながらボクは静かに立ち上がった。

「ここを出るよ、塔矢の家に戻る」

「え?」

「そんなに大した荷物も無いから・・・・・でも全部運び出すには数日掛かるかも知れない。
その間の・・・・荷を運び出す間、少し時間が欲しい」

「そ、そんな!オレの方が出て行く!オレのせいで」

「進藤、ここは元々キミの家じゃないか。どう考えたってボクが出て行くのが筋だろ?」

「塔矢!」

「進藤。これからキミは生まれてくる子供と彼女のことを第一に考えて行くんだ。いいな」


それだけ言ってボクはリビングを後にした。





「ここ、オマエの部屋な。このマンション買う時っからこの部屋はオマエの部屋にって決めてたんだ、オレ」

「呆れた奴だなキミは。まだ付き合ってもいなかったじゃないか?その頃は?」

「へへーーん、絶対オマエ落とすって決めてたから」

「大した自信家だな。その自信をもっと棋戦に生かしたらどうなんだ?進藤?」

「うっ・・・・・とうや〜」

「こらっ。抱きつくな!重い!!」





お互いの想いを告げあって・・・・・そして一緒に暮らそうと決めてこの部屋に入った時の淡い思い出。
もう2年も前になるのか。


「どうして・・・・・・どうして進藤っっ!!」

壁に背をつけたままずるずると床に座り込み、ボクは魂が抜けた様にただ真っ暗な部屋を見つめ続けた・・・・・。


                                                    2005年10月10日

 

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