別れ・8(塔矢side)

「塔矢っ!」

「和谷・・・君?」

「おはよう」

「えっと、おはようございます」

「いちいちお辞儀なんかすんなよ、相変わらず丁寧な奴だな。今日手合いの後なんか予定入ってる?」

「え?いえ、何も無いですけど何か?」

「うん、ちょっと話したいことがあってさ。終わったら下で待ってて」


それだけ言うと和谷君は走って行ってしまった。


「何だろう?」


彼と今まで親しく話をしたことは無い。
と言うかどちらかというと彼はボクを敬遠していた節があったから、なおさらボクに声を掛けてきたことが
不思議だった。



「ごめん、待たせた」

「いえ、それほどでは」

「んじゃ、まずここ出よ」

「あの和谷君、話って一体?」

「ああ・・・・んんーーー進藤のことって言ったらわかる?」

「えっ?」


ボクの顔色がさっと変わったのが和谷君にもわかったのだろう。


「そんな心配するような事じゃないから、安心しなって」


ボクもこれ以上ここに居て進藤と鉢合わせするのは避けたかったので
和谷君に従う事にした。


和谷君が連れて行ってくれた店は、塔矢門下がよく使う和食の店。
どうしてこの店を彼が?まさか進藤が?
(いや、そんなのは有り得ない)
この店がボクのお気に入りだという事は、進藤がよく知っていたから。


「塔矢・・・・オマエ最近体調崩してないか?この間棋院で倒れたって聞いたぞ?」

「倒れただなんて大袈裟なもんじゃないんです。ちょっと立ちくらみを起こしただけなんです。
疲れが溜まってたみたいで・・・」

「いいよ、無理しなくたって。オレ知ってるからさ、お前らの事」

「え?」

「進藤との事さ、オレ知ってるんだよ。や、知りたくもなかったんだけど」



そう言うと和谷君は、ひょんなことからボクたちの関係に気がついてしまった事。
そして進藤からカミングアウトされ、一時嫌悪感から進藤と絶縁状態になったこと、などを話した。


「まあ・・・・オレがそんな関係もありかな?って進藤にお前らの関係を認めるような事を言ってからが大変だったんだぜー!」


そこまで言って和谷君はグイっとビールを流し込んだ。


「毎日毎日毎日・・・・・聞きたくもないノロケ話を進藤から聞かされる聞かされる・・・・・
地獄だったぞ!ホントに!」

「そ・・・それは済まなかった・・・」

「え?そこ塔矢が謝るトコじゃないだろ?!全く〜・・・・・・それなのにこんなことになって!
くそっ!オレだって密かに応援してたんだぞ、オマエたちのこと」

「和谷君、キミは一体どこまで知ってるの?その・・・・ボクたちのこと」

「ああ、一通り進藤から聞いてる。来月、進藤結婚だってな」

「来月・・・・なんだ。そう・・・・。」


(じゃあ、あれから話はどんどん進んでいたんだ・・・これで本当に進藤は・・・)
ボクはコップをギュっと握り締めた。



                                             2005年10月16日

 

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